―高精度金型の加工精度には機械設備が重要
何故、機械を新しくするかって言うと、経年劣化で、機械の精度は年々落ち込んでいくんです。それで機械を、古くなったら新しくするとかっていうふうにしていかないと、なかなか難しいんです。
加工精度って言うのは、金型を組む時に、すごく重要な問題なんです。当然部品が寸法上うまくいってないと、金型を組んだ時に合わないことが発生するんですが、金型を製造する時に精度を上げていくと、それが極力ないと言うことです。例えば、100分の1マイナスしたければ、マイナスする。悪い機械でやると、100分の1マイナスしないんです。おっきくなっちゃった。逆に、100分の1以上、マイナスしちゃったりすると、成型品に、バリとか、歪みが出てきます。
そういうことで、機械はたえず、できる限り新しいもの、もしくはメンテナンスが行き届いてるものでやらないといけないです。機械のメーカーとか、選定も結構重要な問題なので。それも、調べて変えてくようにしています。
―新しい機械と古い機械の違いとは
そこらへんも、目盛りで100分の1下げても、悪い機械は、100分の1下がんないんです。100分の1にいったり、手前になったり。良い機械は目盛りで100分の1下げると、ちゃんと100分の1下がってくれる。そういった意味で、現場の職人加工者が、思ったような寸法で削るためには、いい機械を使わないと思ったように削れないってことなんです。
悪いとは言わないけど、古い機械は、より職人の技が必要になってきます。そうすると年配の人しかできないとか、入ってきた新入社員は使っちゃだめとかなっちゃうんです。古い機械は機械の癖を知らないとだめになっちゃうんですよ。新しい機械は癖がないから、ここ違うとこでやると100分の1動いて、ここでやると100分の2に動きます。じゃあ分かっている人はそれで使うけど、分からない人は全部100分の1行くと思ってるから。そこらへんが、新しい機械と古い機械なんです。
―金型製造のコストバランスも考慮
機械を入れ替えるのは重要なんだけども、それは金型製造のコストにも関わってきちゃいます。あまり替えすぎると、金型コストが上がっちゃう、製造コストが上がってまいます。いいところを狙わないと、いい機械使えば、いいって言うもんでもなくて。なるべく、安くて、長く使ってる機械で、精度を保つって言うのは際どいところです。そこらへんが難しいですね。
逆に、古い機械をいかに長年精度を保つように、大事に使うかっていうことも。そうするとコストにも関わってくるし、次に本当にだめな機械を入れ替える時にそれが、反映されてくる。部品加工屋さんじゃないから。合わせ仕事だから、それなりに難しいですね。
―精密金型とは『F1エンジン』のような一点物
金属加工は一点のみなんである図面に対して、寸法公差が必ず入ってくるんです。金型の場合は、何個も部品が重なってくるので、Aっていう部品が小さくなったらBを大きくしておけば、合いますよね。そうすると、部品単体で行くと公差(こうさ)があるから、公差の一番大きい数値と、公差の一番小さい数字が重なると合わないんです。合わせ仕事だから、そこらへんが「金型」と「部品・パーツ制作」とはちょっと違うところかなと思います。F1みたいなものです。一点物だからすり合わせと言うか「このパーツにはこのパーツしか合わないんだ」と言うのは「F1のエンジンみたい」なもんですよ。
だから、ほかの金型には合わないんです。全部合うようにするには大変です。それこそもっと、精度がいいもので、部品管理をしていかないと合わないです。ものすごい高い金型もあるじゃないですか。そこらへんがちょっと、違うとこじゃないですかね。
―『高精度プラスチック金型』の面白さ
部品屋さんに金型パーツを頼んで「組み立てて終わり」じゃないんですね。
それでできたら、私たちの仕事はなくなっちゃいます。だから難しくて、時間かかっちゃうんじゃないですかね。だからと言って受注金額は同じですから、その中でやりくりしていって、時間をかけずに、いいものをって言う形になっちゃいます。毎回、やってみなきゃ分からないという面白さがあります。